昨日の台風も過ぎ去った今日、直江ん家の風呂の中であることに気がついた。最近あんま自分家に帰ってない。 俺どんだけここに入り浸ってんだろ。 先生と聞くだけで拒否反応が出るのは元ヤンの性だ。 でも別に直江には拒否反応が出ない。それどころか傍にいると安心する。 何でだろ。俺の前では教師っぽい顔見せないからかな。 ハーフパンツとTシャツを着て脱衣所を出た。いつもより長く入ったせいか頭がぽーっとする。暑い。 「なおえー。次風呂」 声を掛けるとパタパタとパソコンを打っていた直江がこっちを見て…逸らした。 「おい?」 「あぁ、はい、入ります」 何だ今の顔。 「疲れてんの?肩マッサージしよっか」 「いえっ大丈夫です。ありがとう」 俺が近寄るとバッと立ち上がる。 さっきの妙な顔はすぐ爽やかな笑顔に消された。そしてそそくさと洗面所に消える後ろ姿。 拒否られたみたいでちょっとショックだ。 沸騰した湯と昆布が入った鍋の中に煮干を入れる。そのまま丁寧にあくをすくっていると、隣に風呂上がりの直江が立った。 「それは何してるんですか?」 身長の高い直江が屈んで話す。風呂上がりのかすれた声が耳元で囁かれ、俺はくすぐったさに頭を振った。 「味噌汁のだしとってる」 少しつっけんどんに答える。直江の髪から滴る雫が肩に落ちた。 「……高耶さん」 「んだよ」 「嫁にきてください」 何言ってんのこいつ。 「キモい!」 ペーパータオルを取り出しつつ、笑うそいつの脛を蹴った。 next |